SPECIAL

スペシャル

TVアニメ「ヴィンランド・サガ」

トルフィン役 石上静香 × 上村祐翔 スペシャル対談

(写真左から石上静香、上村祐翔)


遂に発表されたTVアニメ「ヴィンランド・サガ」主人公トルフィン役キャスト。幼少期は石上静香氏、青年期は上村祐翔氏がそれぞれ担当することが判明した。


『魔法陣グルグル』ニケ役などで少年役の経験を重ねてきた石上氏と、『文豪ストレイドッグス』中島敦役など優しさと強さを秘めた青年役などを演じてきた上村氏。
2人は、トルフィンを演じるにあたってどのような姿勢で臨んだのか。先達たちが強大なヴァイキングとして立ち並ぶ現場の空気は、どのような熱気をはらんでいるのか。
前回の「原作者・幸村誠×監督・籔田修平 釣り堀スペシャル対談」に引き続き、今回は釣り堀居酒屋での対談模様をお届けします!

トルフィン役スペシャル対談

INDEX

「全然、無邪気な子どもの役じゃないぞ(笑)」

――まず、この作品には最初どのような形で触れられましたか?

上村
僕はオーディションのお話をいただいてから原作を読ませていただきました。普段は原作をあまり読み込みすぎないようにしているんですよ。というのも、マンガの絵の力というのは非常に強く、そこから受けた印象だけで演技を組み立ててしまうと、キャラクターの感情とは違ったものになってしまいがちなんです。だから、この作品も最初は読み込みすぎないようにしようと思っていたのですが、やっぱりすごく引き込まれるお話なので、ついつい読み進めてしまいました(笑)。そこで感じたトルフィンという人物の印象は、上っ面で語れないというか、知れば知るほど複雑に思えてくるキャラクターだなと。彼の複雑な内面への理解を深めていくと、もっともっとこのキャラクターに向き合っていきたいな、と自然に思えました。
石上
私もこの作品を知ったのはオーディションのお話をいただいた時でした。無邪気な子どもの役と聞いていたので、チラッと台本を読んだら「殺してやる!」とあって、衝撃を受けたことを覚えています。全然、無邪気な子どもの役じゃないぞ、と(笑)。で、その後で原作を読んだら全然無邪気なわけで、「こんな子がなんで、あんな風になっていくんだろう」と思いました。トルフィンが描かれるのは青年期がメインなのに、少年期までオーディションするというので、最初は珍しいなと思っていたのですが、これはオーディションするほど重要な役柄だと分かりましたし、絶対に演じたいと思いを新たにしました。ここまで感情を爆発させるキャラクターに出会ったことは、私の中でもこれまでなかったと思います。こんなにも人を憎く感じたり、心の底から喜んだり、起伏の大きい幼少期は、演じていてものすごく楽しいだろうなと感じましたし、「これは誰にも譲れない。絶対演じてやる!」と思っていました。だから、役に決まったというお話をいただいた際にはもう、死ぬほど嬉しかったです!

――トルフィンによる感情の爆発は青年期にもありますが、上村さんはどのように演じていらっしゃいますか?

上村
青年期と幼少期では感情の爆発のさせ方が全く異なると思うんです。青年期のトルフィンは根底に強大な怒りがあり、それが、あるときは叫びのように、別のときは内面から蠢くモノがポロっと出てきたりと、毎回変わってきます。その意味で、かなり骨太というか、やりごたえがあるなと感じています。他のヴァイキングの皆さんは基本的に楽しそうに大笑いしているなか、トルフィンは一人だけ隅っこの方にいることが多いので、そのアンバランスさは対比的で面白いなとは思いつつも、そこに引っ張られないよう、怒りに徹しなければならないという現場での難しさもあります。

――のどかな幼少期を過ごしていたトルフィンが強烈な憎悪を持つキャラクターに転じるというギャップを演じるにあたって、石上さんはどのように考えて組み立てていきましたか?

石上
もう、単純に感情の向くままといった感じです。私は組み立てを考えるというよりも、その場で生まれた感情をそのまま投げるんです。「トルフィンだったらそう感じるよね?」、「私もそう思う」みたいな気持ちのまま演じていたので、その意味で難しくはありませんでした。
「目の前にトルフィンがいる!」

――上村さんはそういった幼少期のキャラクターで役作りのベースにした部分はありますか?

上村
僕は青年期から担当するので、そこに徹しようと、オーディションの時点では原作の幼少期は読んでいませんでした。ただ、アフレコがスタートしてからは石上さんが演じられている幼少期の収録のようすをすべて見学させていただいていました。なので、叫んだり思いをぶつけるといった、感情を爆発させる時には、「石上さんのトルフィンならどういう言い方をするかな」と自然と考えてマイク前に立つようになりましたね。その後、青年期の収録現場へ何度か石上さんがいらっしゃった時は「そこにトルフィンがいる」という安心感がすごくありましたね(笑)。
石上
(笑)。幼少期を回想するシーンで、何話か出させていただいたんです。青年期のトルフィンを聞けるのはオンエアのときだと思っていたら、そこで上村さんのお芝居を実際に聞けて。私も「目の前にトルフィンがいる!」ってすごく感動したんですよ(笑)。叫び方とかそっくりで! 多分、よせてくれているんだろうなって勝手に思っていたんですけど。
上村
やっぱりずっと見学させていただいていましたから。いくら青年期はビジュアルがガラッと変わるといっても根っこは同じなので、幼少期に感じた怒りや憎悪の部分は一緒だから、似せようとすると意識もなく、自然と石上さんに近い演技になっていたかもしれないですね。
石上
「トルフィンが目の前にいて、成長している!」、「生き写し!」みたいな感じで、すごく気持ちが盛り上がりました(笑)。実は最初、上村さんがトルフィン役と聞いて意外に思ったんです。これまで、どちらかというと大人しい人物の役を演じる印象があったので、トルフィンのように叫ぶキャラクターを演じるって想像がつかなくて。だから、どう料理してくれるんだろうと思っていたら、自分の想像以上の素敵なトルフィンを仕上げてくれました。

――音響監督の方からいただいた指示で、何か印象的な言葉はありましたか?

上村
「トルフィンは、最初は真っ白なキャンバスだけど、どんどん黒くなっていく」という話をされていたのがすごく印象に残っています。幼少期のトルフィンは本当に少年らしい少年なのですが、お父さんが目の前で殺されてしまってからはドス黒い感情のみで生きていくことになってしまう。その変化や、どうしようもない、煮え切らない気持ちや泣きのお芝居は、本当に一人の観客としても胸にグッとくるものがありました。そういった、さまざまな感情のこもった演技を引き継いでいくプレッシャーもありましたけど、石上さんのお芝居の延長に僕がいられたらいいなと思って演じていますし、石上さんには道を作ってもらえたとも思っています。
石上
恥ずかしい!(笑)
上村
あと、これは籔田監督からですが、「あまり絵は気にしないで」ということをまず言われましたね。トルフィンを演じる上で、“怒り”がひとつテーマになってくるわけですが、そこで自然と出てしまう呼吸感や、歯を食いしばるような怒りは自然と出してしまっていいと。監督は一言一言にこだわりを持って録音してらっしゃる方で、大分テイクを重ねて導いてもらってるなという感じはあります。そこは良い意味で監督に委ねながら演じさせてもらっています。

――石上さんはいかがですか?

石上
個人的にすごく難しかったのは、息だけで芝居をするシーンです。私は演じる際にはいわゆる少年声に変えているわけですが、息だけの声って地声になってしまいがちなんです。それに加え、戦闘シーンだから男っぽく、だけれども10歳のトルフィンの年齢感を出しつつ演じる必要があるというところで、その芝居にはかなり悩みました。「この監督は酷なことを求めてくるな!」って思いました(笑)。
「アシェラッド役の方は会話をしない」理由

――トルフィン役として父親であるトールズとの関係性は演じる上で重要な部分かと思います。松田健一郎さんとのお芝居はいかがでしたか?

石上
原作を読んでいた時に想像した通りの声というか、本当にキャラクターが隣にいるような感じで、すごく演技を引っ張ってもらったなあと思っています。序盤はトールズが主人公みたいなポジションですよね。それに対してトルフィンは父上に憧れてまねっ子をしたりしていたので、主人公というよりは父上の子ども役として演じるような感じでした。
上村
松田さんご自身の持つオーラがすごく温かくて優しくて、本当にトールズにぴったりだなと思っています。声の持つ雰囲気、いろいろ経験してきた結果、この境地に立てたというようなブレなさ、安定感がもう本当トールズだな、と。
石上
父上であり、戦士である雰囲気がやっぱりスゴくて、そりゃ全員憧れる対象にはなるだろうなと思いながら観させてもらっていました。その分、あとの展開を考えた時に「笑顔のトルフィンを演じるのも、あと僅かなんだな」と感じて寂しくなってしまいました。

――幼少期の終わりから青年期にかけてアシェラッドも大変重要なキャラクターですが、いかがでしたか?

上村
僕自身もやっぱりトルフィンとして現場に立ってるので、実はアシェラッド役の方とはお話したことがないんです。いや、キライってわけじゃないですよ?(笑)。とても優しい方ですし、現場も盛り上げてくださるし、いるだけで現場の温度を上げていただいている印象があるんですけど、トルフィンの気持ちを考えるとなんだか心を開けない自分がいて(笑)。本当、トルフィンってよくずっと何年間も一緒にいるなあって思いますよ。

――トルフィンの性格からしてそこは“正々堂々”と決着をつけたい。

上村
そう。トルフィンってやっぱりすごく決闘にこだわるから。決闘のために一緒にいるけど、「今、どういう気持ちでアシェラッドの近くにいるんだろう」という思いは常に巡らせていますね。傍から見たら剣の師匠とか、ある意味ではちょっと父親代わりにも見えるところがあるかもしれないけど、トルフィンは全くそういうふうには思ってないし、そこのバランスが絶妙ですよね。そこのもどかしさという意味で、トルフィンもまだ完全な青年にはなれてない少年のままの部分が、すごく複雑だなあとは感じています。

――お芝居上のやりとりはいかがでしたか?

上村
アシェラッドとは決闘のシーンで何度もリテイクしたところがあるんです。挑発されて、トルフィンが激怒して向かっていくのですが、自分としては憎悪マックスで頭からやっているつもりでも監督からは「まだ足りない」と言われて。それは自分の力不足からなんですけど、アシェラッド役の方は隣で涼しい顔をしていて、それを見ると「なんだよ!」って気になって(笑)。それも終わってみれば、僕の怒りのボルテージを上げるための助け舟だったんじゃないかな、と思ってます。

――そこも含め、現場全体で芝居を作っていることがうかがえますね。

上村
そうですね。アシェラッドに限らず、僕以外の方はほとんど年上の役者陣で、そういう境遇も実際のトルフィンと似てる部分がありますね。皆さんもちろんお優しい方なのはわかっていますが、もう正直、めっちゃ怖くて(笑)
石上
声の圧も半端ないもんね。「マイク必要?」みたいな(笑)。
上村
いや~、この方々を倒していかなければならないと思うと、頑張らなくちゃなと思いました(笑)。
石上
頑張ってほしい(笑)。
上村
そういう現場作りというか、もう既にヴァイキングの雰囲気は出来てる印象があって、非常に熱いものを感じる現場だなと思います。悩んだ末にリテイクを重ねても、一歩ずつ進んでいるという実感は確実に伴っていて、でもやっぱりそれはこういう素敵なアフレコの環境を作ってくださったスタッフさんとキャストの皆さんのおかげだと毎回感じています。
「覚悟して観てほしい」アニメ

――それでは最後に、アニメを楽しみに待っているみなさんへのメッセージをお願いします。

石上
私の中で、「ヴィンランド・サガ」って、実写みたいな感覚なんです。絵空事ではなく、生きている人を演じているという意味で。アニメではマンガでは見えていなかった幼少期のトルフィンも描かれていますので、楽しみに……いや、ちょっと覚悟して観てほしいなとは思います。私は想像以上にダメージを喰らいました(笑)。でもリアルタイムで見てほしいです。ぜひお楽しみにしていてほしいです。
上村
アニメの「ヴィンランド・サガ」の世界観が、一つ一つの絵から受け取れて壮大なものをすごく感じます。それに負けないキャラクターの感情もすごく見えるので、見ごたえがありすぎな作品です。石上さんも今、「覚悟」とおっしゃっていましたが、一つ一つのシーンや台詞が重りがついているように、心にのしかかってくる作品だと思います(笑)。キャスト一人一人がその「重さ」を表現するために、持てる力を全て出し惜しみなく演じる、その重厚さ、大きさや重さ全てを、みなさんに全力で受け止めてほしいと思いますね。このずっしりとした内容を受け止めるのは簡単ではないかもしれませんが、しっかり受け止めてほしいという思いが僕たちにはあります。その上で、観ているみなさん一人一人の感情を動かしていけるように、これからも頑張っていきたいなと思います。
トルフィン対談 ギャラリー
石上さん・上村さんは鯛を釣り上げました!
釣り上げた鯛は、スタッフが美味しくいただきました!